『虚数の情緒』吉田武著(東海教育研究所・4730円)1000ページを超える大部の数学本が、タレントのビートたけしさんの〝お勧め〟で注目を集めている。
きっかけとなったのは、4月に放送されたバラエティー番組でのアイドルグループ「SUPER EIGHT」の村上信五さんの発言。村上さんは、ビートたけしさんから「MCをやるんだから本を読んだ方がいい」「分からなくてもいいから最後まで読むことが大事」と本書を勧められ、半年かけて読破したことが人生の転機になったと紹介した。版元の東海教育研究所によると、放送直後にインターネット書店の楽天ブックスでランキング1位になるなど話題を呼び、重版が決定したという。
巻頭に掲げられた「中学生から読めて(中略)人間の知の全体を一望し得る著作は無いものか」という言葉通り、内容も紙数に劣らぬ重厚さ。第Ⅰ部「独りで考える為に」は、現代の数学教育の問題点から説き起こし、人生論あり宇宙の誕生史ありと、さながらリベラルアーツの入門書といった趣だ。
本書の主役である虚数が登場するのは、なんと450ページを過ぎてから。圧倒的な難度の高さで知られたビデオゲーム「たけしの挑戦状」を思い出しながら、根気よく挑みたい一冊だ。(村嶋和樹)
『虚数の情緒』吉田武著(東海教育研究所・4730円)