明星学苑は今を遡(さかのぼ)る103年前、1923年にこの府中の地に創立されました。創立者は児玉九十先生であり、提唱した建学の精神の1つに「実践躬行(じっせんきゅうこう)」があります。その趣意は「自分で考えて行動すること」です。 現代社会は価値観の多様化や生成AIなどの技術革新、民主主義の変質が進んでおり、こうした予測困難な時代状況をあらわす言葉に「VUCA」があります。Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性)の頭文字。コロナ禍による労働環境の変化、ウクライナ侵攻による食糧供給問題、温暖化による異常気象などがその例です。いずれの問題も未来がどう展開し、そこで生きる力とはどのようなものかが問われることになり、畢竟(ひっきょう)、各個人に「主体的に社会の変化に順応する能力」が要求されています。よって、中高生の皆さんにはこの急激な社会変容を主体的に意識することが喫緊(きっきん)の課題となります。OECDの『Learning Compass 2030』では、明るい未来社会の実現のために、「Agency」と「非認知能力」という2つのキーワードが挙げられています。「Agency」とは自ら考え、主体的に行動して、責任を持って社会変革を実現する力。曰(いわ)く「実践躬行」。非認知能力とは自制心や誠実性、好奇心や協調性など、情緒や社会性に関する数値に表しにくい能力。曰く「心の力」。 教育における知識とは「人が生きる力」を育てることであり、その力が価値を創造し、人間社会の持続性を生みだします。新たな時代を生きる青少年が、社会の変化を肯定的にとらえ、多様性と個の主体性を尊重できる力を認識することで、希望に満ちた未来社会が実現できます。 明星中学校・高等学校は皆さんの入学を心よりお待ちいたします。
明星中学校・高等学校
校長 井上 一紀